【書評】「心が弱いからうつ病になるんだ」なんて誰にも言われない未来を作ろう。『うつ病は心の弱さが原因ではない』

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表紙

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【はじめに】
私は自分の病気が「うつ病ではなかった」と分かった後もずっと不思議でした。(私は副腎疲労でした。それについてはこちら)精神科医たちは何を思って診察していたのだろうと。引っ越しや大学病院の医師の異動や諸々の事情で数十人の精神科医にかかりましたが、彼らはたいてい「薬」の話しかしませんでした。というか「話」はほとんどしなかった。少し調子を聞いて「ふむふむ」程度にうなづいて「じゃあ薬を続けてみましょう」と言うだけだったのです。

先日、2021年2月17日に発売されたばかりのこの本は、慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授が「うつ病の原因の一つはウイルスである」と突き止めたことを、漫画家にしかわたく氏が漫画で綴ったコミックエッセイです。

科学誌に発表

教授が書いた論文はアメリカの権威ある科学誌に発表されました。

前作疲労ちゃんとストレスさんでも近藤教授とタッグを組んだ漫画家にしかわ氏は私の知人です。知人の描いた他に例のないこの「最先端医療科学コミック」をブログで紹介したいと思ったのは、自分がうつ病と誤診されていた過去がある故でしょう。私は自分が長い間通い続けていた世界の裏側で、精神科医たちが考えていた事を知りたいと思ったのです。

今回ブログで紹介させていただくにあたり、画像の使用を快く許可してくださったにしかわ氏に感謝します。

そしてこの本をおススメする一番の理由、それは
『うつ病の原因(の一部)はウイルスのせい』と知ることで、うつ病を心の弱さのせいだと漠然と思っている人たちに考え直して欲しいの
です。

ウイルスである

だいたい「心の弱さ」って、なんだ。
「気持ちを強く持つ」ってどういうことかあなた、説明できる?

長嶋茂雄が選手を指導する際に「そこをグゥーッと構えて腰をガッとする」と言ったみたいに「気持ちをピシっとしてパーンと歩く」ようにしたらうつ病が治るとかあるのか?
あるわけがないでしょうが。

あまりに適当な言葉が氾濫しすぎなんですよ。
知識に基づかないそのテキトーな言葉たちが、世の中のうつ患者を窮地に追い込んでるのよ。

つ病と心の弱さは何の関係もない

近藤教授もハッキリおっしゃってます。
「うつ病と心の弱さはなんの関係もない」
これはそのことを解説した本なのです。


プロローグ

藪中まよい

【あらすじ】
若手女性編集者の藪中まよい(26歳)はうつ病と診断され編集長に診断書を提出する。残業を減らしてもらうためだ。ところが「心の問題」と陰口を叩かれているのを聞いてしまう。

ありがち・・・・。彼女は「うつ病の原因はウイルス」という説を唱える慈恵医大の近藤教授の存在を知り、同期の結仏せおり(26歳)と一緒に話を聞きに行きます。


第1章【心の病気派】VS【脳の病気派】そもそもうつ病って病気なの?

2000年前から医学会ではうつ病の【心の病気派】と【脳の病気派】が対立してるそうです。教授は【脳の病気派】です。

「うつ病治療の一番の敵は患者の家族」・・・無知って怖いですね。

うつ病治療の一番の敵は患者の家族

ところで芥川龍之介と太宰治がうつ病を患ってたのを知ってました?
すいません、私知りませんでした。

芥川龍之介と太宰治

どれだけ世の中で芥川と太宰のイメージが下のように定着してるかってことね。

痴情のもつれ?

でもね、うつ病は心の病じゃないんです。
みんな誤解してるだけなのよ。


第2章 実は終わっているセロトニン説 30年前から進歩なし、うつ病界の天動説

セロトニン説は

「うつはセロトニン不足で起きる説」は30年前の説だと知り愕然とする2人。
私も知りませんでした・・・。
なぜセロトニン不足がうつ病の原因とされたのか?
そしてそれが否定されたのはなぜか?
教授は詳細に説明します。

半分は治らない

うつ病患者の半数にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が効く理由を説明する教授。

うつ病を薬剤で治療するのは原理的に不可能

「半数には効くが半数には効かない」のが抗うつ薬の限界。
なるほどうつ病の薬の開発にはこんな歴史があったのね・・・。
学問的な根拠を失って【脳の病気派】の学者たちは息詰まっている。
この停滞感を吹き飛ばすのが「ウイルス原因説」。

ブレイクスルーが「ウイルス原因説」

この辺は割とささっと読めました。
この次の【心の病気派】についても。
段々ややこしくなります。

でも誰かに何かを話そうとする時に、適当な知識じゃあ説明にならないんですよね。

「ショウガを生で食べると実は冷えるから冷え性の人は食べちゃだめ!」と誰かに話したとします。そこで「どうして?」って聞かれて「生のショウガの成分ジンゲロールには強い解熱作用があるから身体の芯が冷えちゃうの」とちゃんと答えられるかどうかでその話の信憑性が変わるんです。信頼してもらえるかどうかってことよ。
知識って物事を正しく理解するために必要だし、順序立てて知ることで自分自身も初めて深く理解できるのです。


第3章「こころ派」のすそ野は果てしなく広い 心理療法とスピリチュアルの間

【脳の病気派】と対立する【心の病気派】
教授が頭を抱える”こころ派”の本当の問題とはなんなのか?
うつ病が【脳の病気】と証明するために必要なことはなんなのか?

対立しているのはこの一点だけ

宗教・自己啓発・スピリチュアル・・・
うつ病の歴史が長いからこれらの歴史も長い。
なるほど、現代の社会でも「うつ病は心の弱さ!」と言う人が後を絶たないのは長い歴史の流れなのかも知れません。

しかし私達は医学が発達した現代に生きています。
知識を入れ替えて世の中を刷新しなきゃ。


第4章 それでも【遺伝子派】はあきらめない 「うつ病になる遺伝子」ってあるの?

話は変わって「ゲノムワイド関連解析」
病気の人と健康な人の遺伝子を徹底的に比較する研究ですね。
様々な病気の発症に関係する遺伝子の特定が可能になるので遺伝子派はゲノムワイド関連解析に望みをかけたが・・・うつ病に関係する有効な遺伝子は一つも見つからなかった。
ありゃりゃ。

一つも見つかりませんでした

そして遺伝子派が次に期待をかけたのが【細菌叢(さいきんそう)】(マイクロバイオーム)。
そして【メタゲノム】いう新しい次元へ。
研究者たちがどういう経緯でここまでたどり着いたのか教授が説明します。
ふ~む。私達の知らない所で学者さん達はこんな風に苦しんでたんですね。


第5章 うつ病レボリューション うつ病の原因は

ほぼ100%のヒトが感染しているヒトヘルペスウイルス6。
このウイルスが脳神経疾患や精神疾患と関係があるのではと以前から疑っていた近藤教授。

マウスが見事うつ状態に

そして教授はメタゲノムを調べてうつ状態を引き起こすたんぱく質を発見!やった!

証拠はそろった

この第五章がややこしかったです。(小学校の時、理科だけ3でしたんで私)
でもにしかわ氏のカワイイ絵がグイグイ読ませてくれました。


第6章 あなたがうつ病になる確率 ウイルス原因説で患者の未来はこう変わる

この発見の結果うつ病になりやすい人を発症前に予測することが可能になる。
それってどの病気にも言えることだけど、SF映画の名作『ガタカ』みたいな遺伝子操作による完全なる差別社会が到来するのかな・・。そんなディストピア、目の前真っ暗ですわ。


『ガタカ』
原題:Gattaca
1997年 アメリカ映画
監督脚本:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ
音楽:マイケル・ナイマン
遺伝子操作により生まれた優秀で美しい「適正者」ばかりの未来、両親の無計画の性行為で生まれた「不適正者」であるヴィンセントは宇宙飛行士になる夢を諦めきれずにいた。
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発症前に予測

うつ病の原因は一つじゃない。このたんぱく質はうつ病の危険因子。つまり「リスクファクター」なのです。
また「新しい技術というのは常にリスクを伴う」と教授は言います。


第7章 SITH-1は暗黒の遺伝子なのか 人類はうつ病のおかげで進化した?

社会的な動物に進化させた

この章で語られる「近藤教授が考えるSITH-1(うつ病の原因となるたんぱく質)の存在理由」がとても面白いです。それはSITH-1とストレスの関係にあります。教授が考える
「HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)とSITH-1(うつ病を引き起こすたんぱく質)が人類と長い間共存してきた理由」とは一体なんなのか・・・?
うつ病が大きな問題となった理由は、ウイルスではなく社会のあり方だと教授は言います。物事の根本を考えるのって面白いですよね。

そして教授は「ウイルスが突然人類全体に広まって遺伝子の一部のような存在になって宿主の性格を変えてしまう」と言ってます。ウイルスには人間の性格を変えるほどの力があるんですよ。

話は変わりますが私は常々「メンタルはな身体(肉体)と別個に存在しているのではない」と思って暮らしており(まあ当たり前なんだけど)だからこそ「気の持ちよう」とか「心を強く持て」とかいう根性論が大キライ。
気分や考え方は身体の状態に大きく左右されます。
悪いものをなるべく食べず、適度に運動し、合成界面活性剤の入ったシャンプーで洗髪をせずに、時々森や海に行く。そもそも健康とは全体的なバランス。そして人間の身体は食べたもので出来ているのです。

私が一番不思議に思っていることは、精神科に通っていた頃医師に「何を食べているか」と聞かれた記憶がないこと。彼等は私が副腎疲労だと知らなかったわけですが(副腎疲労という病気自体を知らないし知っても認めようとしないでしょう)現在、栄養面での治療を受けている私にとって、一般的に医師が食べ物に関する興味がないことがとても信じられません。


第8章 うつ病を予防するにはどうしたらいい?疲労とストレスとうつ

教授のところにやって来たこの2人。誰・・・?

先客っすか?

この2人から「疲労とストレス」の話を聞き、これまでの学習をまとめると藪中まよいと結仏せおりはヘルペスウイルスと疲労の関係について気づきます。

予防は完璧

近藤教授は新薬開発もすでに始めているし、将来的にはSITH-1抗体を測定する血液検査も行われるかも知れません。ですがまだ先の話。疲労をためないことが一番のうつ病予防であることに変わりないのです。

うつ病になりやすい人と

どんな人がうつ病になりやすく、どんな人がなりにくいのか、また疲労やストレスがうつ病の引き金になる具体的なメカニズムも今回教授は掴んだのです!

病気の仕組みがはっきり

そういえば、私は20年以上自分のことを「うつ患者」だと思って療養生活を送っていたけれど、親戚や親の友達という時々会う人に、心無い言葉をかけられたことがありません。(母は親戚にイヤな事を言われたらしいけどね)それって今思うとすごいこと。なんて恵まれていたんでしょう。
そんな環境でいられたからこそ私は生き延びられたのかも知れません。

そして。

「うつ病の原因の一つはウイルス」と分かればきっと「うつは気のせい」と言う人が劇的に減るでしょう。
「え?うつは気の持ちよう?あんたいつの時代の話してんの」って感じで。
ウイルスが気のせいなわけがない。早くこのニュースが巷に知れ渡ってくれないかなぁ。それだけで気持ちに余裕が生まれる人がどんなにたくさんいるだろうと思うんですよね。

近藤教授の発見、それは「住みやすい社会への第一歩」。
めでたい!

花火

この本を読んで「それでもうつ病は気のせい!」なんて言う人はいないだろうし、うつ病を患っている本人でも可愛いらしいにしかわ氏のコミックならスラスラ読めるかも知れません。それだけでも十分この本が世に出た意味はあると、私は思います。

ちなみに。私はうつ病ではないのに20年以上自分をうつ病だと思って生きてきたわけですが、この本を読んで「もし自分が昔、血液検査で『うつ病ではない』と分かっていたらどうなっただろう」とあまり思わないのです。それはおそらく大量の向精神薬の服用をやめ断薬した結果、一応覚えてはいるけれど、あの頃の記憶は他人の記憶のような気がするからです。それはある意味”覚えている”よりも恐ろしいことです。私には実感として20代や30代の頃の記憶はないのですから。

ところで「疲労」と「ストレス」は違うものって知ってました?

次回「疲労」と「ストレス」は違うもの

最後に教授のところへやってきたこの2人。実は前作『疲労ちゃんとストレスさん』で教授からレクチャーを受けた2人だったのです。

疲労ちゃんとストレスさん

近藤教授は「疲労を測る方法」を発見したよ!

というわけで後日、前作『疲労ちゃんとストレスさん』2019/11/21発売)を紹介します。
お楽しみに~!

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Arek SochaによるPixabayからの画像と
nck_gslによるPixabayからの画像を使用しました。

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